毒舌社長は甘い秘密を隠す
お見合いしないでください、と言えたらいいのだけど、それには理由が必要だ。
でも、私が社長に想いを寄せていて、他の誰かの旦那さんになるのが嫌だから……なんて、どんな顔をして言えばわからない。
もし、私に勇気があって伝えられたとしても、失恋するに決まってる。
なによりも、その後も彼の秘書として働かなくてはいけない環境に耐えられる自信は、今のところない。
そっと息をついて気を取り直し、九条さんに連絡を入れることにした。
《――はい。九条です》
「お世話になっております。Fluffy ALPAの沢村です」
《お久しぶりです。その節は大変お世話になりました。お元気ですか?》
「おかげさまで、変わらずに過ごしております。お忙しいところ突然申し訳ありませんが、少しだけよろしいでしょうか?」
九条さんも変わらずに優しい声色で話してくれる。
多忙を極めているはずなのに、それを相手に感じさせないのは、彼の社長としての器でもあるだろう。