毒舌社長は甘い秘密を隠す

「大丈夫だった?」
「なんとか合格をもらいました」

 留美さんは、私があわてて自席に戻って作業しているのを見て、社長に絞られていると気づいていたようだ。


「考え事をしながら仕事をするものじゃないですね。間違って資料を提出してしまいました」
「うっかりすることは誰でもあるんだし、気を落とさないで頑張ろう」
「はい」

 留美さんは前向きな人だ。常務が優しいから、穏やかに働けるんだろうと思っていた頃もあったけど、彼女は元から心に余裕のある女性だと知ってから、学ぶところが多い。

 社長に冷たくされても、愛想なく毒舌ばかり浴びせられても、にこっと微笑んで業務をこなせるようにならなくちゃ。
 たとえ、彼がお見合いをしてしまったとしても。

 実は、数日前、九月の下旬に非公開の予定があるのを見つけてから、なんとなく嫌な予感がしている。
 彼のスケジュールは、秘書の私にはすべて共有されるはずなのに……。

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