毒舌社長は甘い秘密を隠す

 慌ただしくしている間に十八時三十分になっていた。真夏の空は十分明るく、一日が長く感じられる。


「沢村さん、そろそろ出れる?」
「はい、大丈夫です」

 留美さんとなかなか予定が合わずにいたけれど、今日は前もって都合をつけておいた。
 八神さんに失恋した留美さんは、早くも次の恋を見つけたようで生き生きとしているし、他の同僚も日々充実しているように感じる。
 私も、少しでも社長に好かれたくて、今まで以上にお洒落にも気合を入れるようになった。
 襟元に花の刺繍がされたお気に入りの白いカットソーに、軽やかなシフォン地のプリーツスカートは最近新しく買ったお気に入りのコーディネートだ。


 社長室のドアを三回ノックしてから、そっと開ける。


「失礼いたします」

 夕方になっても忙しそうに働いている社長は、デスクに向かったまま私を一瞥した。


「お先に失礼いたします」
「帰るのか」
「はい。食事に出ますので」
「……わかった。お疲れさま」

 仕事のことを考えているからか、難しい顔をしたままの彼に一礼して出た。

 今夜も社長の自宅に帰る。
 だけど、私がいる理由は彼を癒すだけなのだろうか。もっと他にも方法はあるはずなのに。

 聞くに聞けず胸の奥にしまって、留美さんと会社を後にした。

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