毒舌社長は甘い秘密を隠す

 汐留にある商業ビルの上階まで、エレベーターで向かう。
 途中で耳鳴りがするほどの速さに慣れる前にドアが開いて、降りても鼓膜が戻らない。


「留美さん、こんな高いところにあるお店、よく知ってますね」
「いい男がいそうでしょ?」
「そういうつもりでここにしたんですか?」

 にこっと微笑まれ、ついドキッとした。はんなりとした上品な顔立ちの彼女は、間違いなく着物が似合うだろう。
 もし八神さんと想いが通じていたら、彼の会社のブランドの着物を着て、デートをしたのかもしれない。きっと彼女だって何度もそれを想像したんだろうなぁ。


「いらっしゃいませ」
「中里で二名です」
「お待ちしておりました。ご案内いたします」

 白基調の店内は、大理石の床といい流れているジャズといい、私が行ったことのあるお店とはムードが違う。
 こんなに素敵なレストランは、やっぱり人気があるようで、金曜の早い時間帯なのに数名のお客ですでに賑わっていた。

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