毒舌社長は甘い秘密を隠す

「お世話になっております。Fluffy ALPAの沢村と申します」
《お世話になっております》

 十一時に約束していた、大地主で取引先の九条さんとようやく連絡が取れた。

 来社時間の三十分前では、もしかしたら既にこちらに向かっている可能性もあるけれど、井浦社長がいないことは伝えておかなくてはならない。


「九条様、大変申し訳ございません。本日、井浦の都合がつかなくなってしまいまして、お手数なのですが日程のご調整をお願いしたくご連絡いたしました」
《あぁ、そうですか。こちらは構いませんので、また日を改めましょう》
「突然の変更で申し訳ございません」

 井浦社長の声も甘さをはらんでいるほうだけど、毒舌のせいでその影を潜めている。
 だけど、九条さんの声は電話越しでも優しく、話しているだけで焦っていた気持ちがホッとするようだ。

 突然の申し出に快く応じてくれた九条さんに、つい頭を下げてしまった。

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