毒舌社長は甘い秘密を隠す
《大丈夫ですよ。彼とは親しい仲ですから、沢村さんも気を使わないでください。それで、私もお願いがあるのですが……》
「はい、なんでしょうか?」
取引先からの申し出をメモしようと、ペンを走らせる準備をする。
《これから、沢村さんに会いに行ってもいいですか? ちょっと相談したいことがあるんです》
「私にですか? どのようなご用件でしょうか?」
話を聞けば、物件について女性目線の意見が欲しいとだけ言われた。
《ご都合が悪ければ、無理にとは言いません》
今日の予定がすべてキャンセルになったぶん、自由時間はある。
その間も、庶務業務や他の役員付の秘書のサポートをするから暇ではないけれど、九条さんと話すくらいの余裕はあるだろう。
「かしこまりました。では、予定通りお待ちしております。お気を付けてお越しくださいませ」
十一時に面会のアポイントをスケジューリングして、井浦社長には予定の調整が済んだことと、九条さんが来社する旨をメールで報告した。