毒舌社長は甘い秘密を隠す
「もう会うのはやめよう」
「どうして!?」
「……大切な人がいるからだよ」
大切な人がいると言ったのは、縁談のことだと気づいた。彼がそのつもりなら、身辺整理を始めてもおかしくないし、私だってそのうち彼と暮らせなくなるだろう。
「いいから帰って。じゃあな」
お札を握らせて、待っていたタクシーに強引に女性を乗せた彼は、私に気づくことなく背を向けて、マンションに入っていく。
「っ!!」
持っていた携帯が震えて驚いた。
画面は社長からの着信に切り替わっている。
「――はい」
《あ、俺。帰ってくるなら、開けといてやるよ。別に急がなくてもいいから、どうぞごゆっくり》
私も帰ってきていると言おうとしたのに、勝手に電話を切られてしまった。
今夜の社長は不機嫌なようだ。声色も言葉もなんだか適当で突き放すように感じられた。