毒舌社長は甘い秘密を隠す

 やがて、隅田川の支流沿いに建つツインタワーが見えてきた。勝どき駅を通り過ぎる前から道も空いている。

 ツインタワーの前の赤信号につかまってしまい、車寄せまで乗せようとしていた運転手に「ここで降ります」と告げて降車した。
 もう一度、社長の携帯を鳴らしてみる。だけど、やっぱり繋がらない。

 敷地内の歩道を歩いていたら、一台のタクシーが入ってきて私を追い抜いて行った。住人が多いから、きっと帰宅した人だろうと気にせず歩を進める。

 社長、今日は帰るの早かったんだなぁ。今週も忙しかったから、もう眠ってしまっているかもしれない。
 目黒の自宅に引き返すのを覚悟していたら、タクシーから降りてきた人影に足を止めた。

 社長と綺麗な女性がふたりで降りてきたのだ。


「いいから、今日は帰ってくれ」
「どうして? 響くんとやっと会えたのに」

 もしかして、前に会いたいとかなんとか話してた相手だろうか。
 彼に見つかるのが気まずくて、私は咄嗟に街灯のポールに隠れて背を向けた。

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