毒舌社長は甘い秘密を隠す

 時間になって、一気に暗くなった。
 そして、波の音が聞こえてきて、一面を覆い尽くす星空が現れた。次いで、海辺の香りや緩やかな南風を感じ、ハワイにいるような錯覚を起こさせる。


 五分ほど経って、始まる前から涙ぐんでいた彼女が気になり、ふと隣を見遣る。
 暗闇に目が慣れてきていて、プラネタリウムの星に見入っている横顔が見えた。その瞳にも星空が広がっていて、うっとりするほど綺麗だ。


 毎日俺といて、どんな気分?
 一緒にいない時間も、俺のことを考えていてくれたりする?
 今日はどうして楽しそうに笑ってくれたの?

 会社とは違う君をたくさん見つけては、毎日が終わるたびに恋をしてるんだよ。
 こんなに一緒にいるのに気づいてくれないのは、俺のせいなの?

 それとも、気づかないフリをして、俺に悪戯をしてる?

 聞きたいことは山ほどあるのに、言葉にしたら好きだと気づかれるから言えない。
 フラれるのが嫌なんじゃない。
 彼女が俺の隣で働くのに、重荷になるようなことはしたくないだけなんだと気づいた。

 選ぶのは彼女。
 だけど、伝えなきゃ選んでもらえないだろうな。

 彼女への想いに耽っていたら、目が合いそうになって慌てて逸らした。

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