毒舌社長は甘い秘密を隠す
「なに?」
「あの、実は……今日は、九条さんに話があると言われてご一緒したんですけど」
「あぁ」
相槌がいつになく冷めて聞こえる。
やっぱり報告してから行くべきだったかもしれないけれど、九条さんと会うと怪訝にされたことがあったから、なんだか言い出しにくかった。
今になって、私は彼に妬いてほしかったんだと気づいた。
特別に想われていないと分かっていても、少しでもいいから気にかけてほしかったのだ。
今後のキャリアを考えれば、九条さんの元に行くのも悪くない。
でも、やっぱり彼といたい。これから会社が成長していく未来も、いずれ親会社を後継する彼が活躍する姿も、社員として見ていたいし支えたい。
たとえ、彼が他の人と結婚してしまっても、彼が私を必要としてくれるなら……。
「……話しにくいことか? なにを聞かされても、受け止めるつもりでいるが」
どんと構えている彼が、私をまっすぐに見つめてくる。
その瞳に、何度恋をしたかなんて、彼はもちろん知らないだろう。
散々振り回されて、毒舌でへこまされても、好きで好きでどうしようもないなんて、きっとこの瞬間も彼は気づいてくれなさそうだ。
九条さんは、私の想いに気づいていたのに……。