毒舌社長は甘い秘密を隠す

 考え事をしながらマンションの中を歩き、いつの間にか彼の部屋の前に着いていた。
 鍵を開けてドアを引くと、彼が先に帰宅していたようで、玄関に革靴が並んでいる。


「ただいま帰りました」
「おかえり」

 リビングに入って声をかけると、ソファにいた彼が振り向いて微笑んでくれた。
 黒縁眼鏡をかけている彼を見るのは久しぶりだ。微笑まれただけで胸の奥が忙しくドキドキと鼓動を打つけれど、今夜はなんだか後ろめたさも感じる。


「今日は誰と食事に?」
「九条さんです」
「……そう。なにを話してきたんだ?」
「実は、そのことでご相談がありまして」

 かしこまった私の様子を察した彼は、ダイニングチェアに座り直し、私も対面に座った。

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