毒舌社長は甘い秘密を隠す

 でも、社長は私の未来を真剣に考え、冷静にじっくりと向き合おうとしてくれている。
 ありがたいことなのに、想いは募るばかりだ。

 彼は最高の上司。
 身勝手だし毒舌だし、平気で私を振り回すけれど、仕事ぶりを毎日そばで見ていて尊敬している。

 こうして一緒に暮らしてみて分かったのは、いかに自分が彼のことを好きでいるかということ。
 この前は私を労うために出かけてくれて、靴もプレゼントしてくれて……。軽い気持ちで口にしたハワイの星空だって見せてくれた。

 そんな彼にずっとついていきたいのに、私が九条さんの話に頷いたら、簡単に手放されそうで悲しくなった。


「シャワー浴びてきます」
「ゆっくりしておいで」

 寝室からパジャマなどを持ち出し、慌ただしく浴室に入ってシャワーを浴びた。

 彼の気持ちを試すような自分が嫌で、消えたくなる。
 一緒にいたいなら、断るつもりでいると話せばよかったのに。

 どんな言葉でもいいから、ただ引き留めてほしかった。
 だけど、今の私は、彼がずっと隣に置いておきたくなるような、そんな秘書にもなれていないのだろう。

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