毒舌社長は甘い秘密を隠す

 シャワーから出ると、彼の姿はリビングになかった。
 仕事でもしているのかと思ったけれど、ドアが開いたままの書斎にも姿はない。

 寝支度を整えてリビングの明かりを消し、寝室に入る。
 先にベッドに入っていた彼を見つけて、そっと私も隣に横たわった。

 毎日こうしているのに、未だに慣れない。
 彼が私を抱きしめずに眠らなかった夜は、この生活が始まってから一度もなかった。そのたびに想いを強くして、触れられない彼の心に手を伸ばしてきたつもり。

 だけど、彼は天井を仰いでいる。
 私に触れることもなく、ただ黙っているばかり。私はその横顔を見つめた。


「社長、おやすみなさい」
「……あぁ」

 九条さんと会っていたのを快く思っていないのかもしれない。気まずいままでいつまでも過ごすのは、精神的に不健康だ。


「あの、社長」
「んー?」
「今日、すみませんでした。九条さんと会うなら報告を入れるべきでしたよね」
「……プライベートなんだろ? だったら別にいい」

 そう言ってくれた彼の言葉尻は、やっぱり明るくない。
 どこか諦めたように投げやりな感じがして、彼の顔を見つめた。

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