毒舌社長は甘い秘密を隠す

「まだ残ってたのか?」
「あっ、おかえりなさいませ」

 客先に出向いていた社長が戻ってきて、自席にいる私を見つけて声をかけてきた。


「君が用意してくれた資料、すごく役に立ったよ。ありがとう」
「それはよかったです」

 外資系企業の日本本社に出向く予定だったので、予めできる範囲で調べた内容をレポートにして、昨日のうちに渡しておいた。
 社長が客先を知らないで伺うなんてご法度だし、彼は忙しくてきっと手が回らないと思ったから、先回りしてやっておいただけなのだ。
 差し出がましいかと思っていたけれど、結果役に立ったようでホッとした。

 相変わらず、社長の無茶なスケジューリングに振り回されたりであまり余裕はなかったけれど、そんな中でも頑張ったことを褒められただけで、秘書としては大満足だ。


「そろそろ出られそうか?」
「はい。あとはメールチェックだけです」
「じゃあ、食事に行くか」
「えっ!?」
「そんな驚くようなことじゃないだろ」

 彼はそう言うけれど、仕事の後に誘われたことがなかったから新鮮で……。

< 278 / 349 >

この作品をシェア

pagetop