毒舌社長は甘い秘密を隠す

 なんとなく見覚えのある光景で、ロビーにいると気づいた。無事にお店を出てこれたようだ。


「社長、お会計……」
「褒美だから、気にするな」
「ありがとう、ございます……。ご馳走様でした……」

 あとはなにを話そうかな。
 お礼は伝えたから、最低限のマナーは守れた。早く酔いをさまして謝らなくちゃ。
 そう思うのに、身体がついてきてくれない。頭の中もぐるぐるしていて、メリーゴーランドのように景色が回転してるみたいだ。


「ちょっとここで待ってて」
「はい」

 支えられながら歩き、ロビーに並んでいるふかふかのソファに座った。少し離れたところにあるフロントで、彼がスタッフと話しているのが見える。

 本当、素敵だなぁ。
 後ろ姿でも、彼だってすぐに気づく自信があるくらい、毎日のようにずっと見てきた。
 彼の隣にいるのは私がいいのにな……。

 他の誰かの旦那さんになるなんて想像もしたくないのに、現実はなかなか厳しい。

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