毒舌社長は甘い秘密を隠す
数分で戻ってきた彼が、私の肩を寄せて様子をうかがってくる。
「気分は悪くないか?」
「平気です。すみません……飲みすぎました」
「飲ませたのは俺だから、気にするな」
今夜はデート。今後そう何度とないチャンスだったのに、なんで深酒しちゃったんだろう。
「もう少しだけ歩ける?」
「はい、大丈夫です。すみません、いろいろと」
「もっと俺に甘えていいんだから、これくらいどうってことないよ」
しっかりとした腕に頼りきって歩き、エレベーターに乗った。
「社長」
「ん? なんだ?」
ゆっくりと彼を見上げる。
大好きな彼は、会社で見せる厳しい表情ではなく、私を案じる穏やかな顔をしていた。
「もっと、一緒にいたいです……。響さん、離さないで」
あぁ、もうダメだ。
彼には縁談があるのに、こんなことを言ったら仕事にも支障が出てしまうかもしれない。
いくら彼が想ってくれているとしても、長く続く未来はきっとないのにな。
頭では分かっていても、心はもう限界。
出会ってからずっと想い続けてきた気持ちが、溢れてしまった。