毒舌社長は甘い秘密を隠す
しゅーっと湯気が出ているのではないかと思うほど、頬が熱い。
目の前には、なんとも麗しい微笑みを向ける彼が、私を待っている。
「い……いってらっしゃい、響、さん……」
「優羽、いってくるよ」
「っ!!」
今度は勝手に唇を奪われて茫然としている私を残し、彼は颯爽と出て行った。
「キス……された……」
これは、いわゆる〝新婚さんの朝〟の再現だ。
まさかもう一度同じような朝がやってくるなんて思わなかったから、しばらく余韻に浸ってしまい、家を出るのがギリギリになった。
まったく、毒舌でいじわるなのか、甘くて優しいのか彼はつかみどころがない。
出社は変わらず九時前。
今朝は後輩が先に来ていて、私が秘書室に入ると挨拶を交わした。
留美さんが出社してきて全員が揃い、今日の予定を確認しあう。
「沢村さん、今日は午後の外出から直帰で変わりないですか?」
「はい。不在中の連絡の取次ぎなど、ご対応お願いいたします」
不在する時間が長い時は同僚に協力を仰ぎ、業務に支障をきたさないようにする。
場合によっては、外出先でも対応できるよう、タブレットの携帯を忘れないようにしなくちゃ。