毒舌社長は甘い秘密を隠す
――九月中旬のよく晴れた朝は、爽やかな風が吹いている。
先日、彼とホテルで過ごして以来、特に変わったことはなく、私たちは付かず離れずの平行線のまま。
書斎のテーブルにハンカチを置き忘れているのを見つけて、玄関に向かう彼の背を追った。
「社長、ハンカチを忘れてます」
「あ、悪い。ありがとう」
仕立てのいいスーツを着こなす彼は、本当に素敵だ。靴を履いて、姿見で身だしなみを確認する横顔に見入ってしまった。
「昨日はよく眠れた?」
「……はい」
「そう。俺は、いつも通り優羽の寝顔をしばらく眺めてから寝たよ」
「えっ!?」
いつも通りって、どういうこと!?
「安定の面白い顔を拝んで寝たから、いい夢が見れたよ」
膨れていると、彼は私の寝顔を思い出しているのかニヤッと笑った。
「それじゃ、行ってくる。またあとでな」
「はい。いってらっしゃいませ」
「うーん……それでもいいんだけどさ」
彼が、私を手招く。
言われるままに近付くと、長身から舞い降るように彼が耳元に唇を寄せた。
「そろそろ、〝いってらっしゃい、響さん〟って言ってくれよ」
そう言ってから、私の耳に小さくキスをした。