毒舌社長は甘い秘密を隠す
「なにを落ち込んでいるんだ? 暗い顔をして」
「……社長、お願いがあります」
こんなことを言ったら困らせるだけだって分かっているのに、想いが募る。
そして、背中を押すような勢いに乗せられた。
「我儘を申し上げますが、縁談を断っていただけないでしょうか」
「理由は?」
怪訝な表情を浮かべた彼に、言葉が詰まる。
あぁ、やっぱりこんなこと言わなきゃよかった。理由を聞かれても、彼のことが好きだからだなんて言えない。
いくら彼が私を想ってくれていても、彼が婚約するその時までだとしか思えないのに。
それなのに、好きで好きでたまらなくて、気づけば涙で視界が滲んでいた。
「仕方ないな。かわいい秘書の我儘だから、叶えてやるよ」
ハイバックチェアからゆっくり立ち上がった彼は、デスクを挟んで立っていた私の隣に立った。