毒舌社長は甘い秘密を隠す

「予想通りです」

 だけど、彼が席を外してすぐに、九条さんはいつもの優しい瞳で微笑んで言った。


「井浦さんが引き留めるのも、あなたが私の誘いを断るのも予想していた通りですよ」
「……それは、どういう意味ですか?」
「煽ったんです。井浦さんとあなたを見ていると、じれったくて仕方なかったもので」
「ええっ!?」

 軽く握った手で口元を隠しながら笑う九条さんは、初めて見るいじわるな顔をしている。


「どうしても井浦さんといたいなら、沢村さんも素直にならないと。きっと彼は、あなたの想いを知ったら喜んでくれるはずですよ」
「私は井浦を尊敬しているだけで」
「本当にそうですか? 私は、あなたが後悔するのを分かっているような気がしてなりません。何事も、現状を変えたいなら踏み出してみないと」

 的を得たことを言われ、なにも言い返せなくなった。
 でも、社長には縁談がある。
 九条さんはそれを知らないから、きっとこんなことを言うのだろう。

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