毒舌社長は甘い秘密を隠す


「社長」
「……あぁ、優羽か」

 他に誰もいないからよかったものの、すんなりと私を名前で呼んだ彼に注意しようとした。
 でも、彼は心なしか元気がないように見えて、出かかっていた言葉を押しこむ。


「どうしたんですか?」
「んー? 別にどうってことはないんだけどな」

 そうは言うけれど、元気がないくらいは分かる。
 彼はアルパくんを撫でながら、深くため息をついた。


「あと少しで、お前と離れると思うとさみしくてさ」
「アルパくんですね。社長、かわいがってますもんね」
「お前だよ、優羽」
「えっ、私ですか?」

 てっきりアルパカたちと別のフロアになるのがさみしくて、名残惜しそうにしているのかと思ったのに。


「お前が千堂と仕事をするって考えただけで、嫉妬するんだ」
「でも、仕事ですから」
「お前は、俺がいなくなっても平気か?」
「……そういうわけじゃないですけど、でももう決まったことですし」

 確かに社長と離れるのはさみしいけれど、恋人になった今は心が穏やかだ。
 千堂副社長に関係が知られてしまったのも、今後を考えれば仕事がしやすくなると思う。

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