毒舌社長は甘い秘密を隠す

 十二月は、どの企業も慌ただしい。
 気忙しさに背を押される気分がそうさせるのかもしれないなんて思いながら、比較的ゆとりのある予定を確認する。


「こんにちは、沢村さん」
「お忙しい中ありがとうございます」

 予定通りに来社した九条さんを、フロアの入口で出迎えた。
 そのまま応接室に案内して、用意しておいたお茶菓子と紅茶をお出しする。


「井浦は電話中でして、もう少しお待ちください」
「わかりました。それはそうと、あれからどうですか?」

 九条さんには、私の気持ちがいち早く気付かれてしまっていたけれど、わざわざ交際の報告を入れるのも違う気がしていたのだ。


「私事で恐縮ですが、無事お付き合いをさせていただいております」
「そうですか! それはよかった。井浦さんにはもちろん言わないでおきますね」
「そうしていただけると助かります」
「私も、今日は報告があるんですよ」

 九条さんがそう言うと、ちょうど応接室のドアがノックされて、井浦社長が入ってきた。

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