毒舌社長は甘い秘密を隠す
社長が仕事の話をしようと、タブレットを操作する。用意したデータに不足がないか確認してもらってから自席に戻ろうとしたら、九条さんが口を開いた。
「井浦さん、今日はご報告がございまして」
「はい」
彼が作業の手を止めて、九条さんと向き直った。
「実は、かねてよりお付き合いしていた女性と、このたび婚約いたしました」
「そうでしたか。おめでとうございます。いつからお付き合いを?」
「来年で四年になります」
「……四年、ですか」
「ええ」
きょとんとしている社長を見て、九条さんはしたり顔で私を見遣って微笑んだ。
九条さんの計画はもちろん社長に秘密にしておこう。彼のおかげで私も幸せなんだから。
社長はすぐに表情を引き締め、微笑んでいる私を目を合わせた。
自席に戻り、今日の予定をこなしていく。
彼がこの会社にいるのもあと三カ月ほど。その間に学ぶことも多いだろうし、私は秘書としてまだまだ力量が足りない。
千堂副社長を迎える新体制になっても、しっかりとサポートしていかなくては。