毒舌社長は甘い秘密を隠す

「――なに?」

 ぶっきらぼうに声をかけられたけれど、彼の機嫌がいい証拠だ。最悪のタイミングだと、目の前にいるのに無視されたこともあるのだから。


「お電話中に失礼いたしました。明日、九条様との面会が予定されておりましたので、お声掛けしました」
「あぁ、昨日の件でね。夕方から会って、そのまま食事に出るから」
「かしこまりました」

 十七時に予定されていたのは、そういう都合だったのか。タブレットのメモ機能に、食事に出ることを残す。


「お食事される店の手配はいかがされますか?」
「こっちでやる。プライベートだから」
「はい」

 もしかしたら、九条さんが彼女との未来を考えていて、物件を探している話でもするのかもしれない。
 それなら私も相談されたのだから無関係ではないと思うけれど、あくまでも社長のお客様なのだからときっちり線引きをした。

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