毒舌社長は甘い秘密を隠す

「野心があって仕事に真摯なところです」
「あとふたつ」
「微笑みが優しいところと、心配りが細やかなところ……です」

 どれも秘書になる前に抱いていた印象だけど、嘘ではない。最初はそんな彼に惹かれたのだから。
 でも、今の私が再び惹かれるようになったのは、ギャップのある姿を知ったのがきっかけで……。


「よくできました。じゃあ、約束通りいいこと教えてあげる」
「なんですか、いいことって」
「井浦社長、今は彼女がいないんだって」
「……そうですか」
「あれ? 反応薄いなぁ。沢村さん、せっかく日頃近くにいるんだし、今がチャンスかもしれないんだよ?」

 いくらチャンスと言われたって、私情を仕事に持ち込むわけにはいかない。


「チャンスって、社長と特別な仲になりたいとは思っていません」
「なーんだ。沢村さん、私と同類なのかなって思ってたのに」

 留美さんが、ちょっとだけ口をすぼめて拗ねている。

< 59 / 349 >

この作品をシェア

pagetop