毒舌社長は甘い秘密を隠す
社長が風邪を引くから、私なりに仕事をしたつもりだったのにな。
……なんて考えや愚痴も、今の社長の耳には入れない方がいいだろう。
「おかえりなさいませ」
「こんばんは。あとで牛ひき肉とホールトマトの缶詰、適当な野菜とパスタを買ってきてもらえますか? もし売っていたらスイーツも」
「かしこまりました」
豪勢なツインタワーマンションに到着し、ロビーで出迎えたコンシェルジュにそう告げた彼は、私の様子なんて気にも留めない。
サッサと先を歩き、エレベーターに乗り込んでしまった。
「あの」
「早くしてくれ」
そんなことを言われても、どうして社長のご自宅に?
問いかけたくても、彼の苛立っている様子が目に見えて言えなくなる。
躊躇しながらもふたつ目のエレベーターに乗り継ぎ、社長の自宅に再び入ってしまった。