毒舌社長は甘い秘密を隠す

 汐留からは十分とかからずに到着し、車寄せで停車すると運転手が回り込んでドアを開けてくれた。


「一時間ほどで戻ります」
「かしこまりました」

 運転手に告げ、社長の背を追う。
 アイスグレーのスーツ姿が様になる彼は、歩く姿も姿勢がよくて格好いい。
 私が総合受付でアポイントの確認をしている数分の間も、エントランスロビーのソファで長い脚を組んで座る社長は、居合わせた女性たちはもちろん、男性の視線も一身に集めている。


「沢村様、お待たせいたしました。十一時にアポイントの確認ができましたので、社長室までご案内いたします。お手数ですが、こちらの入館証を身につけていただきたく、ご協力をお願いいたします」
「かしこまりました」

 受付の女性から来客用のIDケースを渡された。
 あとは社長を伴って、案内についていくだけ。九条さんには、手土産は不要と常々言われているし、社長同士の仲がいいから、他の企業を訪れる時よりも幾分か気楽だ。


「社長、受付を済ませましたので……」

 だけど、ソファにいる社長に声をかけようとして、足を止めた。

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