毒舌社長は甘い秘密を隠す
基本的にこういった仕事の話は営業部の担当者同士で話を詰めるけれど、うちの社長は違う。
仕事を現場に任せて、決裁や意見だけするようなことはなく、時間が許す限りできるだけ自分の言葉で相手に伝え、相手の声と表情を見聞きして仕事を進めていきたいと思っているのだ。
だから、九条さんのような親しい相手には、両社にとって有益な仕事になると確信した上で、ちょっとハードルの高いワガママなんかもぶつける。
私は、温度のあるやりとりを大切にする社長の考えが好きだ。
それを有言実行する真面目な人柄も、私が彼を尊敬している理由で……。
「今日は沢村さんもご一緒で驚きました」
「すみません、お邪魔してしまって」
話が一段落したところで、九条さんが穏やかな眼差しを私に向けた。
「いいえ、いつかお越しいただきたいと思っていたのでよかったです。またいつでもいらしてください」
「ありがとうございます」
話しているその隣で、井浦社長はなんだか面白くなさそうだ。