毒舌社長は甘い秘密を隠す
社長の癒しの時間を禁じ、あろうことか指を噛んで気分を害してしまうなんて。
秘書どころか、女性としても彼の目にはきっと〝対象外〟として映っているだろう。
「社長、あの……」
もう一度謝って許してもらおうと思ったのに、ちょうどエレベーターが目的階に到着してドアが開き、九条さんが直々に出迎えてくださっていた。
社長と共に応接室に通された私は、東京タワーが大迫力で見える眺望に見惚れてしまいそうになった。
九条さんには何度も会ったことがあるけれど、会社にお邪魔するのは初めてだ。うちのビルからも綺麗な景色は見れるけれど、ここの景色は九条さんにすごく似合っている気がする。
フィット感のいい椅子に腰かけて、持ち込んだ資料をテーブルに広げ、タブレットも置いて打ち合わせの準備を整えた。
「早速ですが、先日お話した土地に新しい商業ビルを建設する件で――」
社長が話しだして、九条さんも少し引き締まった表情になった。
それは井浦社長も同じで、互いに気心知った仲だからか、他社の重役と顔を合わせる時と比べて、ずっと場の空気も軽い。