毒舌社長は甘い秘密を隠す

 九条不動産を出て、車寄せに待たせていた社用車に乗り込んでも、井浦社長は無言だ。
 それだけならまだしも、どことなく不機嫌そうなのが伝わってくる。


「社長、戻られましたら昼食をお取りになってください。午後は予定が詰まっているのでタイミングがありません」
「いらない」
「体調が悪いのですか? 病院に寄る必要があれば、予約を入れておきます」
「必要ない」

 ぶっきらぼうな受け答えも変わったことではない。
 でも、やっぱりなんだか気になって、隣に座る彼の様子を見る。


「……九条さんと食事に行きたかったか?」
「いえ、仕事がありますので。私は社長が会議に出られている間、昼食を取るつもりでいました」
「そう」

 断ったのは社長なのに、今さら気にかけられても困る。
 じっと彼の横顔を見つめていたら、彼はつまらなそうな顔で私を見て、また車窓に視線を流していた。

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