毒舌社長は甘い秘密を隠す

 社に戻って一時間半。会議が始まってランチタイムになった。


「留美さん、聞いてください」
「なに? 社長の愚痴?」
「そうです」

 時には愚痴りたくもなる。
 他の役職者や中堅クラスの社員は、みんな普通に接してくれるのに、井浦社長だけはさっきみたいな感じなのだから。
 これじゃ、いつまで経っても片想いは進展しない。それどころか、永遠に片想いさせられそうだ。


 五月目前の午後はとても麗らかで桜が散ったあとの新緑が目にまぶしい。
 会社の並びにあるテラス席が人気のイタリアンダイナーで、日替わりメニューからそれぞれ選んだ。
 留美さんはしらすと紫蘇の和風パスタ。私はカルボナーラ。ここのカルボナーラは胡椒が効いていて私好みだ。


「なにかあった? 沢村さんが愚痴る時は溜まった時か、相当なことがあった時だよね」
「……なにっていうか」
「誰にも言わないから、話しちゃいなさい。あの人に付いて働きたいなら、吐き出さないと潰れるよ?」

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