愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


見た目からしてまだ20代前半くらいなのだろうか。とても若く、腕の中の男の子の姉のようにも見えた。
姉弟? それとも親子なのだろうか?
私が推測していると女性は食いつくように質問してきた。


「あ、あのっ! 藤堂先生は……、クリニックは今日は?」
「藤堂クリニックなら今日はお休みですよ?」


扉の中に置かれた看板の日曜日休診という文字を指差してそう伝えながら、女性の腕の中にいる男の子を見ると真っ赤な顔でグッタリしていた。
熱でもあるのだろうか。呼吸が浅く、苦しそうだ。


「どうしよう……! あの……この子、息子が朝から熱があって、身体に湿疹があって……」


動転しているのか、青ざめた顔でとぎれとぎれに訴えかけてくる。男の子は汗もかいていた。
息子ということはこの女性はこのこの母親なのか。突然の息子の様子に慌ててここへ来たようだが、クリニックが休みだと知り途方にくれていたようだった。
女性の様子に私も動揺してしまう。

どうしよう。

なるべく早く治療させてあげたほうがいい気がする。でも、日曜日にやっている病院なんて近くにあるのだろうか?
とりあえず、携帯で検索をかけてみるとなくはないようだが、なにせこの町に引っ越してきたばかりで土地勘がなく、自信を持ってここにあると教えられない。
下手に間違ったことを教えて、なにかあったら大変だ。



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