恋を知らない

「よせっ。やめろよっ」

恥ずかしい行ないをやめさせようと、彼女に飛びかかった。ためらいはあったものの、両脚の柔らかな太ももに手をかけて、無理やり閉じさせようとする。

「うあっ……」

突然「めぐみ」のマリアに抱きつかれたために、今度はぼくのほうが尻もちをついた。

彼女はケラケラと笑いながら首にしがみついてくる。そのままぼくは床に押し倒されてしまった。

もがくぼくの体に、柔らかな「めぐみ」の体がずしりとのしかかってくる。

甘ったるい女の子の匂いが鼻をついた。気が遠くなるような、いい匂いだった。もしかしたら、それもまた性的な興奮を呼び起こすフェロモンの一種なのかもしれなかった。

「ああっ、シュウ……シュウ……」

「めぐみ」のマリアが、ハアハア、と荒い息づかいて、ぼくの首筋に吸いついてくる。

「やめろ、やめろ。そんなことをするな」

夢中でもがきながらそう言ったら、信じられないことに、本当に彼女のキスが止んだ。

彼女はぼくの上に乗ったまま少し頭を持ち上げて、ぼくを見おろした。

そこには、初めて「めぐみ」を見たときのような、ヤンチャなガキのような顔はなく、妖しく艶やかな色気を放つ大人の女の顔があるばかりだ。

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