恋を知らない
あの日――。
ぼくは頭上にふりかざしたパイプ椅子を、力いっぱいふりおろした。
椅子は「めぐみ」のそばの床にたたきつけられて、ゆがんだ。
「めぐみ」にしろマリアにしろ、壊すなんてことは、ぼくにはとてもできなかったのだ。
ぼくはみっともなくその場に泣き崩れた。
やがて「めぐみ」に支えられ、ベッドへ行って、横たわったまま泣き続けた。
「めぐみ」はそんなぼくに添い寝して、頭を撫で続けてくれた。
そして何時間たっただろう。
泣き疲れて虚ろになったぼくは、突然欲望を覚え、「めぐみ」に挑みかかった。
――無理しないで、シュウ。
――したいんだよ。「めぐみ」としたいんだ。
そう言いながら、ぼくは強引に「めぐみ」をベッドに押さえつけ、ブラウスもプリーツスカートもしわくちゃにして、ひとつになった。
あのときを機に、たぶん何かが変わったのだと思う……。