海に願いを 風に祈りを そして君に誓いを
机を真ん中にして向かい合い、なんでもない話をしながらチョコレートを食べていると、優海が「もうすぐだなあ」と言った。

「ん? 期末テスト」
「ちっげーよ! 夏休みだよ!」
「あー、そっちね」
「そうだよー、テストとか言うなよーせっかくのデザートがまずくなる」

いじけた表情をする優海のとがった唇に、ポッキーをぶすりと差し込む。

「いや、夏休みの前に期末テストのほうが大事でしょ、特に優海は」
「そうですけど! でも夏休みじゃん! 心踊るじゃん!」
「はいはい」
「高校生の夏休みだぞ! そんなん楽しむしかないだろー」
「そうだねえ、楽しめるといいねえ」

笑って答えながらも、胸に刺さった棘がずきずき痛んで存在を主張してくる。

忘れるなよ、忘れるなよ、と言っているようで、顔が強張りそうなのを必死にこらえた。

「夏休みになったらさあ、普段より部活も早く終わるし、日曜は休みになるし、凪沙といっぱい出かけられるな」
「そうだね」
「どこ行く、どこ行く? やっぱ海水浴と盆踊りは外せないよな。久しぶりに映画も行きたいな。あとキャンプとー、街デートとー、そんでカラオケだろー、花火大会だろー、それとー……」

指折り数えながら列挙する優海に、「あはは、多いなー」と応える。

「そんで、なんと言っても、夏祭り!!」

どくっ、と心臓が嫌な音を立てた。

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