星降る夜空に祈りを込めて
西澤総合病院

そこは俺の父親が医院長として運営する、救急指定病院にもなる地域の医療を担っている大きな病院だ。

西澤透悟、三十五歳。
医師になり研修期間も終えて七年。
だいぶ医師としても、そこそこに仕事ができるようになってきた。
二年前に政略結婚で大手医薬品メーカーの令嬢で本人は医師になった冴子と結婚したが、お互い仕事命でそこに愛はなく、冴子はうちのコネを使って研修留学するのが目的だった。
冴子自身を昔から知っていて、妹のようにしか思ってなかったので、そこを受け入れての仮染めの結婚生活。
その大半は冴子が留学していて不在。


そんな折、来年にはその冴子が帰国し互いに想う人が別に出来たり、そういったことがなくても帰国したら離婚という話が出ていた頃に、俺は大切に想える人に出会った。


新米で若々しいが、仕事にはひたむきで努力が見える。
そんな笑顔が可愛らしく、やる気に満ちた彼女に俺は柄にもなく一目惚れした。


先輩に怒られても、医師に怒鳴られてもめげなかった彼女が唯一泣いていた。
それは初めての受け持ち患者を見送った時だった。

そんな場面に出くわした時。
それが俺を彼女に更に惚れさせる。
支倉佳苗との出会いだった。

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