星降る夜空に祈りを込めて
気にかけて、自分から話しかけたりして。


いつになく、慎重に接して少しづつ佳苗との距離を縮めて…
付き合うようになるのに半年近く掛かった。


一回り以上も歳下の彼女は、とても可愛らしく。
会うたびに、触れるたびに愛しさは募った…


彼女にとって俺は初めての男だった。
その事に年甲斐もなく喜び、浮かれていたのだろう。
俺は彼女に会えるたびに溺れるように彼女を離さず、触れて確かめて、何度も何度も繋ぎとめるように体を繋げていた。
付き合いたての盛りのついた高校生のような勢いで…
とても、大人のすることではないし…
大人気なかっただろう。


それ程に佳苗を愛し、欲していた。
彼女こそが、この先の俺の人生のパートナーであると感じていた。
大切にしていた。
しかし、想うばかりで彼女へと言葉にしていなかった事。
彼女に自分の何も伝えず、教えていなかった事。


俺は彼女を失ってからその事に初めて気付いた。
愕然としつつも、その事態を招いた己に不甲斐なさを感じた…


さらに、とても辛く大変な時に俺は彼女に頼ってもらえなかった…
俺はそれ程までに彼女にとって何にもなれていなかったという事実に打ちのめされた…


それでも諦めきれず、佳苗の消息を探し続け、彼女を求め続けて…


そうして漸く見つけた。
既に彼女が俺の前から消えて五年の月日が経っていた…


俺はその間に跡継ぎを弟に譲り、佳苗を探しながら、今の医師としての仕事に思うところがあり、診療科を限定せず診れるように総合医になるべく勉強を重ねていた。


< 11 / 56 >

この作品をシェア

pagetop