赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う


「これは……私には恐れ多すぎると言いますか……」


 コルセットで上半身の細さを主張し、花冠形に段々と膨らむブルースターの花の色に似た水色のドレス。

大きく開いた胸元には、瞳の色と同じブルーゾイサイトの宝石が飾られている。


 そんな自分の姿を自室の鏡越しに見つめると、ついつい身に着けている物の総額を予想して卒倒しそうになる。

 ため息をついて腰を屈めると部屋に来ていたアルファスが、いつもシェリーがするようにビシッと指をさしてきた。


「シェリー、シャキッとしろよな! そんな丸まった背筋じゃ、レディ失格だぞ」


 ごもっともなお説教をアルファスにされてしまい、シェリーは苦笑する。

 彼もまた、今日の前夜祭に備えてボタンが宝石でできている赤褐色のジェストコールに細かい金糸の刺繍が施された王族衣装を身に着けていた。 


「アルファス様の言う通りですね。あなたの先生らしく、堂々といなければ」


 肩をすくめて笑って見せると、アルファスはじっとシェリーの顔を見つめる。


「アルファス様、どうかなさいましたか?」

「シェリーはさ、絶対に僕のことを馬鹿にしないよな」


 唐突に投げられた話題には、なんの脈絡もなく「え?」と首を傾げてしまう。

 彼は驚きと喜びが入り混じったような瞳で、シェリーの顔を見つめたまま続けた。


「皆は僕がワガママだとか、国王として失望しただとか言うけど、シェリーは僕に間違ったことは間違ってるって言ってくれるし、絶対に否定したりしないんだ」

「アルファス様……」


 きっと彼は、多くの期待と失望の中で息をしている。その苦悩は想像でしかないが、アルファスから国王になりたいと思わせる自発性を奪ってしまっていたんだろう。

 シェリーはそっと、幼いその体を抱き寄せて頭を撫でた。


「アルファス様が成長なさっていることは、側にいる私が一番わかっています」

「妃に迎えるなら、シェリーみたいな女がいいな」

「言葉は上品さに欠けますが。ふふっ、うれしいです」


 アルファスと笑みを交わしていると、部屋の扉がノックされる。「どうぞ」と声をかけて入ってきたのは、スヴェンだった。

 いつもは白色の軍服なのだが、今日は真紅の瞳と髪がよく映える深紺のジェストコールに黒のズボン、ブーツといった見慣れないスタイルだった。


 軍服のときは飾帯に薔薇のモチーフをした剣を差しているのだが、今回は社交界の正装なので代わりに襟元のスカーフに家紋の薔薇のブローチが飾られている。


 屈強な騎士というよりは、どこぞの王族なのではないかと錯覚するほどに品にあふれていて思わず見惚れてしまった。


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