赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「アリシア様から聞いてはいたが、シェリーも前夜祭に参加するとはな」
「お誘いいただいたのはうれしいのですが、高価なドレスが身の丈に合わない気がして……落ち着かないです」
そう言えば、スヴェンはシェリーのドレス姿を上から下まで眺め始めた。
ふと昨日の晩に彼の胸でさんざん泣きじゃくったことが走馬灯のように脳内を駆け巡り、体を這う視線も手伝ってか居心地が悪くなる。
シェリーは目を伏せて、恥ずかしさを紛らわすように片方のもみあげを耳にかけた。
すると剥き出しの肩にスヴェンの無骨な手が乗り、反射的に顔を上げる。
「お前は綺麗だ」
「え?」
情熱を宿して煌く、彼のガーネットの瞳を戸惑うように見つめ返す。
いつもなら堂々と触れてくるのに、躊躇いがちに伸ばされたスヴェンの手が頬の輪郭をなぞり始めてゾクリと肌が栗立つのを感じた。
「家柄など関係ない、内面から滲み出る美しさだろう。着飾ったお前を他の男に見せるのが心底嫌になる」
「なっ……なにをおっしゃっているのですか!」
また私をからかかっているのですか、そう言おうとして口をつぐむ。向けられた彼の瞳を見れば、心から出た言葉だということはわかった。
だからこそ、戸惑う。どうしてスヴェンが自分のような庶民を気にかけるのかと。
「エスコートは俺がしても?」
窺うように顔を傾けるスヴェンに手を掬われて、ポッと頬を赤らめる。
「はい……」
おずおずとその手を握り返せば、腕に回すよう促される。フッと満足そうに笑う彼はどこか嬉しそうで、初めて見せた無防備な表情にサッと顔をそむけた。
(スヴェン様でも、あんなに子供らしい顔をするのね)
心臓がトクトクと音を立てて、激しくなっていく。そんなシェリーの耳元に唇を寄せたスヴェンから、「かわいいな、シェリーは」と囁かれてクラッと目眩がした。
「なんだよ、エスコートは僕がしたかったのに!」
シェリーたちを見上げてつまんなそうに唇を突き出すアルファスに、スヴェンは深々と頭を下げた。