赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う


 やがて大広間の扉の前にたどり着く。
スヴェンの目配せで控えていた騎士により扉が開かれると、くぐもって聞こえていた優美な音楽が鮮明に耳に届いた。


 天にはいくつものシャンデリアが輝き、磨かれた地面は鏡のように貴族令嬢や婦人の色鮮やかなドレスを映している。


 四方八方の壁には金箔の浮彫があしらわれており、無数の光を反射させていた。

どこを見渡しても華やかな黄金の世界。シェリーは夢見心地になりながら、赤薔薇の騎士に導かれて広間の中心へと歩いていく。そこにはアルファスと前王妃がおり、こちらに笑顔で手を振っていた。


「遅いじゃないか、ふたりとも」

「アルファス、女性には準備に時間がかかるものよ」


 ご機嫌斜めのアルファスの肩に手を乗せて、諭したのはアリシア前王妃だった。


「だって、シェリーにダンスを見せたかったんだよ」

「もうダンスは、始まってしまっていたのですか?」


 時間通り来たはずなののに、と不思議そうな顔をするシェリーに前王妃が「参加者の皆様にお願いされて一曲だけ踊ったのよ」と教ええてくれる。


「じゃあ、次はシェリーが僕と踊ってくれよ」


 アルファスのお願いに、いつものシェリーなら「はい」と即答していただろう。

 でも、一瞬迷ってしまった。最初はスヴェンと踊りたかったのだ。

 なんて身の程知らずなのだろうと自分でもわかっているけれど、どうしても彼の一番になりたかった。きっとこの気持ちは、抱いてはいけない特別な感情だ。


 それに、母君であられるアリシア前王妃の次に踊るという約束をアルファスとしていたので断れない。


 向けられる無垢な瞳を見つめながら諦め悪く悩んでいると、アリシア前王妃がスヴェンに手を差し出して告げる。


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