赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「それだけシェリー譲が魅力的ということだよ。だから、周りには気をつけたほうがいい。どうやら、もうすでに彼女の周りでおかしなことが起きているようだからね」
「なんだと?」
スヴェンの問うような視線が、こちらに向けられる。ただの勘違いかもしれないので、話す段階でないと思っていたのに先にウォンシャー公爵に言われてしまった。
なんとなく気まずくて、シェリーは目を伏せる。
「何度も言うけれど、俺は白だ。君が疑いの目を向けるべきは、もっとほかにいると思うけど。誰が真に狙われているのか、それを見極めることだね」
意味深な発言を残してシェリーたちの横を通り過ぎようとしたウォンシャー公爵だったが、ふと足をとめてじっと見つめてきた。
「短い間でしたが、あなたと話せて有意義な時間を過ごせましたよ。聡明なローズ家の才女であれば、そこの頭の固い騎士公爵様より先に真実に辿り着けるやもしれませんね」
スヴェンへに皮肉をこめて、恭しくお辞儀をして去っていくウォンシャー公爵を呆然と見送る。
物怖じしない性格なのか、スヴェンを相手にここまで挑発的な態度をとれる彼をある意味さすがは公爵を務めるだけあると賛辞できる。
「あの男は何度言葉を交わしても、いけすかんな」
苦い顔でため息をつくスヴェンは、シェリーの瞳をまっすぐ見つめ返すと、その顎を掬ってさらに上向かせる。
「あのっ、なにをなさるのですか!」
じたばた暴れるシェリーの体を片腕だけで強く抱きしめ拘束し、顔を近づけると「仕置きだ」と優しく咎められる。
「失礼ながら、身に覚えがありません」
迷惑かけるようなことはしていないはずだけれど、知らないところで粗相をしていたのだろうか。緊張の面持ちで彼を見上げていると、体に回る腕に力がこもる。
「ならば教えてやろう。まず身の回りで異変があったのなら、なぜ俺に早く知らせないのだ。なにかあってからでは遅いのだぞ」
「あ……ですが、勘違いかもしれないので」
「聡明なお前がおかしいと思ったのならば、勘違いではない。そもそも、その判断はこの俺がする。お前は気になったことを逐一、俺に報告するようにしろ」
きつい言い方ではあるものの気遣いが感じられる。かなり心配させてしまったようなので、謝罪することにした。