赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「申し訳ありません」
「謝罪はいい。それで気になったこととはなんだ」
「はい、実は……」
シェリーは自分や前王妃の部屋の前に、薔薇が落ちていたことを話した。
王妃の部屋の薔薇の意味までは勘ぐりすぎだろうと思い伝えなかったが、スヴェンはなにか思うところがあるのか難しい顔をする。
「大広間の薔薇とナイフといい、広場の道化師の言葉といい……。ウォンシャー公爵の忠告もあながち的は外れてはいないらしい。疑いの目を向けるべきはほかにいる、か……」
ウォンシャー公爵が残した言葉が引っかかるのか、スヴェンは復唱する。
「あの言い方ですと、ウォンシャー公爵は疑いを向けるべき者の検討がついているようですね」
スヴェンも同じことを感じ取ったのか、「ああ」と首を縦に振る。
「だが、なぜその人物の正体を口にしないのか。それが返って怪しいのだ」
「それは……ここで口にすることが危険を伴うからではないでしょうか。つまり、城の人間には聞かれたくないということでは?」
ここまで助言をくれたウォンシャー公爵が敵とは思えない。彼が話せないとしたら、話すことで地位や財産、なんらかの不利を被るからだろう。
「シェリー、その可能性は大いにあるな。そしてそれが意味することは、ただひとつ。内部にアルファス様の命を狙うものがいるということだ」
「内部に……否定したいですが、そうかもしれませんね」
シェリーがこの城で最も危険な立場にある人間の特別な存在なったというウォンシャー公爵の言葉を思い出す。
あれはスヴェンの言う通りアルファスのことなのか、それともアリシア前王妃のことなのか。はたまた、目の前のスヴェンのことなのだろうか。
わからないけれど、安易に引き受けた国王陛下のカヴァネスは思ったより危険な仕事だったのかもしれない。