赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「シェリー、これからは俺以外を信用するな。事が解決するまでは外出や学舎での授業にも俺か、手配した護衛騎士をつけるように」
「わかりました。それで、その……ひとついいでしょうか」
視線を彷徨わせながらおずおずと声をかけると、スヴェンは「なんだ?」片眉を上げた。
「そろそろ手を放してくださると助かるのですが」
いつ切り出そうかと思っていたのだが、会話中ずっとスヴェンの手が顎にかかったままなのだ。
唇が触れ合いそうな距離で話し続けるのは心臓がもたないので、遠まわしに放してほしい旨を伝えたのだが――。
「なにを言う。まだ話は終わっていないぞ」
至近距離にあるガーネットの瞳が燃えるような赤さを増して、シェリーはゴクリと喉を鳴らす。
薔薇の如く甘い色香にむせ返りそうになりながら、その硬い胸板を両手で押し返してみたけれどビクともしなかった。
それどころか、さらに距離を縮められて心臓が激しく鼓動する。
「ま、まだなにか?」
シェリーは震える唇で、なんとか言葉を紡ぐ。
その問いかけが気に食わなかったのか、スヴェンの瞳は非難するようにシェリーを見つめ、腰に回っていた手が髪の中へ差し込まれる。
「ウォンシャー公爵と、ふたりきりになったことへの仕置きが残っている」
「そ、それは意図的にではなく偶然です」
「経緯はどうでもいい。結果がそうであったなら、お前の仕置きは免れん」
スヴェンは「覚悟しろ」と最後に囁くと、吐息ごと閉じ込めるような口づけをしてきた。
頭が真っ白になったシェリーは抵抗することを忘れて、触れる唇の熱に目を見開く。
(どうしてなの、スヴェン様)
彼の舌が外気で荒れたシェリーの唇を潤わせるようになぞる。髪の中に差し込まれた手は、何度も頭を撫でてくれていた。
ひたすらに甘い口づけをされる意味がわからない。これが仕置きというのなら、どうしてこんなにも優しく触れてくるのだろう。
まるで恋人にでもなったかのようで、勘違いしてしまいそうになる。
角度や触れる深さを変えてじっくりと味わわれた唇がようやく離れていくと、スヴェンはまだ足りないとでもいうように飢えをその瞳に宿す。
彼の濡れた唇は月光を浴びて妖艶な輝きを放っており、とっさに目を逸らした。