赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「はい、スヴェン様」
ドレスの裾を摘み、お辞儀をしてその手を取る。
スヴェンは微笑を口角に浮かべて繋いだ手を引くと、もう片方の手でシェリーの細い腰を引き寄せた。
音楽はないが、時折ターンを入れたりしてふたりのリズムで体を揺らす。ダンスの間、視線はずっとお互いに向けられていた。
「お前は月光を浴びると、謎を秘めた神秘的な女性に見える。今こうして見つめ合っていると、吸い込まれてしまいそうで恐ろしいな」
「恐ろしい、ですか?」
それは不快という意味だろうか。
弱弱しい面持ちで窺うように彼の顔を覗き込めば、柔らかい声で諭すように告げられる。
「あぁ、お前に心を支配されていくようでな。こんな奇妙な感覚は初めてだ。ひとりの女性にここまで執着する自分に出会ったことがない」
告白同然の言葉をかけられ、シェリーの頬は瞬く間に熟した林檎の如く赤く染まる。
彼が自分を好きになるはずがないと何度も言い聞かせながら、心の端では考えている。
もしかしたら、本当に自分を好いてくれているのではないかと。
「お前が心を語れないのは、俺の非力さゆえだろう。だから、手始めにお前の周りで起きている異変について調査してみるとしよう。お前が信用するに足る存在と判断したならば、そのときは俺に返事をくれるか?」
「調査って、あの薔薇のことをお調べになられるのですか!?」
シェリーは動揺して大きな声を出してしまう。
「あぁ、しかし、この城で誰が信用できるのかも定かではない。まずはひとりで調査をしてみることにする。俺が必ず守るから、安心して――」
「いっ、いけません!」
ひとりで調査するだなんて、あまりにも危険すぎる。
シェリーは繋いだ手に力を込めて、必死に見つめた。
「スヴェン様がお強いの知っておりますが、無茶はしないで。私はあなたが危険な目にあってまで、守ってほしいとは思いません」
好いている人が危険に飛び込もうとしている。両親のように大切な彼を失ったらと思うと、想像するだけで体が震えた。
そんなシェリーに気づいてか、スヴェンは安心させるように手を握り返してくる。