赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「すみません、うれしくて」
「かまわん。俺もこのときをずっと待っていたからな」
スヴェンも熱心にアルファスを見つめていた。
子離れしていくような寂しさと同時に、嬉しさが胸にこみ上げてくる。側で仕えてきた者同士、この感情は同じなのかもしれない。
「ギュンターに見せてやりたかった」
スヴェンの言うギュンターとは、前王ギュンターフォード一世のことだろう。戦友だったのだと、前に話してくれたことがある。
この姿を一番に見たかったのは父である前王だろう。それが叶わなかった前王の気持ちを考えると、胸が切なく締めつけられた。
今日は前王妃も大公と並んで式典に参加している。
それだけでなく国政を動かす四公爵にも見守られて、アルファスは晴れて国王としてお披露目されるのだ。
祭壇で王冠持って控えている神官は聖帽につけられた目元まで隠れるベールのために、顔がはっきり見えない。
というのも、教皇以外は神に祈り祝福を受けるという神聖な場で顔を出すことを禁じられているためからだ。
「今ここに、ギュンターフォード二世の即位を認める」
司祭の言葉とともに、冠がアルファスの頭に乗ろうとした瞬間。司祭の背後に控えていた神官がどこからともなく取り出したナイフを勢いよく振り上げる。
「我々は今、成し遂げる! 王座を散らし、アルオスフィアの平和を終わらせるのだ!」
掲げられたナイフの矛先は、アルファスだった。
「アルファス様ーっ!」
悲鳴をあげるシェリーの隣にいたスヴェンが弾丸のように飛び出すと、振り下ろされた男のナイフを弾く。
宙を舞ったナイフはステンドガラスの七色の光を浴びて煌きながら、神聖な祭壇の床に突き刺さった。
「貴様っ、邪魔をするな!」
「その声ナイフといい、お前はあのときのジャングルールだな」
スヴェンの言う通り、道化師の仮面を被って不吉な言葉を残し逃走したあのジャングルールと同じ声をしている。
床に突き刺さっているナイフも、広場で掲げていたものと同じように見えた。