赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「俺が言えることは話したさ。しかし、抗うための力が整っていないうちは迂闊に口にできないんだよ」
ウォンシャー公爵のその言葉に、スヴェンは「そうか」と険しい顔をした。
「今の答えで、おおよそ見当がついたかもしれん」
「そうか、王城も荒れるね」
いつものへらっとした笑みを浮かべて、ウォンシャー公爵は両手を後頭部に当てる。そこでようやく、スヴェンの口元にも弧が描かれる。
「だが、荒探ししなければ、ネズミは見つからん」
「頼りにしているよ、騎士公爵様」
背を向けたウォンシャー公爵は、「またね」と言って手をひらひら振りながら歩いて行ってしまう。
「シェリー、屋敷まで送ろう」
こちらを見下ろして優しく声をかけてくるスヴェンに、なんだか申し訳ない気持ちになる。
議会だけでなくアルファスの側近としての仕事もあるというのに、彼の貴重な時間を自分のために使わせていいのだろうか。
「お忙しいのに、よろしいのですか?」
「俺がそうしたいのだから、送らせてくれ」
子供にするように頭を撫でられると、なぜか逆らえずにうなづいてしまう。
それに満足したのか、スヴェンは「よくできたな」といっそう眼差しを和らげてシェリーの肩を抱くと、馬車まで歩いた。
即位式当日。
アルファスは町の大聖堂で即位式を行ったあと、広場で民へのお披露目をしてパレードに参加する予定になっている。
シェリーはカヴァネスの正装を身につけて軍服姿のスヴェンの隣に並び、祭壇の上で片膝をつくアルファスの姿を目に焼きつける。
この大聖堂は宗教団体をまとめる教皇であるガイルモント公爵が運営しており、王族関係の祭事はすべてここで行われる。
此度の即位式もガイルモント公爵から戴冠を賜ることになっているのだ。
そのときを静かに待っているアルファスは、この短期間で随分と凛々しい顔をするようになった。
成長を側で見守ってきたからこそ、この瞬間を迎えられた感動は大きい。胸が熱くなって目に涙を滲ませていると「本当に人のことばかりだな」と耳打ちされる。
隣にいるスヴェンを見上げれば、困ったように笑っていた。