言い訳~blanc noir~
 絵里子が苦笑いしながら和樹に目配せする。


「ごめんね。美樹ちゃんちょっと飲み過ぎたみたいだからこれで連れて帰るよ」


「大丈夫? タクシー呼ぼうか?」


「いや、通りまで出れば拾えるから。ほら、美樹ちゃん行こう」


 和樹が手を引くと美樹はそっぽを向いたまま立ち上がった。


「お先に失礼します」


 お祭り騒ぎの連中に和樹が会釈する。バーの外に連れ出された美樹は、まるで私が悪いみたいじゃないとイライラが収まらなかった。

 面白くない。何にでも文句をつけたくなる。美樹の胸の裡は荒れていた。


「引き出物重たい。何で花瓶なんか選んだんだろ。こんなもの貰っても迷惑だよね」


「ほら貸して」


 引き出物が入った袋を美樹から受け取り和樹が歩き出す。


「それに今日の料理だってケチってるよね? 私ならあんな料理、恥ずかしくて嫌だな」


「そう? 俺は美味しかったけど。美樹ちゃんの口に合わなかった?」


「うん。全然美味しくなかった。あと絵里子のウェディングドレスもさ、何で背が低いのにマーメイドなんか着てるんだろ?」


「絵里子ちゃん、背低かったっけ?」


「私より5センチも低いのよ。絵里子、160センチよ?」


「女の子で160センチって結構高いほうだと思うけど」


「椎名さん、何センチ?」


「178だったかな」


「私と椎名さんのほうが絵になるよね? そう思わない?」


 もういい加減にしてくれ。


 思わず乱暴な言葉が口をついて出そうになった。

 強引にその言葉を飲み込んだ和樹だったが、空気に聡い美樹はすぐに気が付いたらしい。


―――椎名さんは私の気持ちなんて全くわかってない。


 明らかに不機嫌そうな表情を浮かべて、美樹が足を止めた。
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