言い訳~blanc noir~
千尋が強く言葉を重ねた。和樹はその言葉に思わず顔を上げる。
「私が五十嵐の娘だからこそ、この関係が成立している事くらい重々承知しています。
父の立場を重たく感じながら反発した事もこれまで何度もありましたけど、こんなときだけ父の肩書きを利用した私も決して誇れるような女ではありません。
椎名さんと結婚出来るならどんな手段でも使おうなんて邪な考えを持っていましたから」
そう言うと千尋は肩をすくめ悪戯っ子のように笑った。
その仕草がどこか沙織と重なった。
「……どうして僕なんですか?」
「運命なんていう言葉、椎名さんはお嫌いかもしれませんけど。私は勝手に運命のようなものを感じました。
本当にわからないんです。あの日、銀行で椎名さんに声を掛けてもらった後ずっと椎名さんの事が頭から離れなくて。もうこうなったらダメ元でいいから告白でもしてみるか! って。私にしては珍しくノリと勢いで突っ走りました」
「ノリと勢いですか」
苦笑いすると千尋も目元を緩ませた。
「無理に沙織さんの事を忘れようなんてしないでください。だけど、止まっていた時間を少しずつ動かしていきませんか?」
両手で和樹の手を握った千尋はにっこりと笑みを浮かべた。
その優しげな表情がまるで氷のように冷え切っていた胸のわだかまりをゆっくりと溶かし始めた。
和樹はまつ毛を伏せ唇を結んだまま僅かに口元を綻ばせ、そして「はい」と静かに頷いた。
「シロ、クロちゃん、沙織さーん! 私が椎名さんを絶対に幸せにしますから!」
天井を見上げながら千尋が声をあげた。
「―――それは僕の仕事ですから」
「私が五十嵐の娘だからこそ、この関係が成立している事くらい重々承知しています。
父の立場を重たく感じながら反発した事もこれまで何度もありましたけど、こんなときだけ父の肩書きを利用した私も決して誇れるような女ではありません。
椎名さんと結婚出来るならどんな手段でも使おうなんて邪な考えを持っていましたから」
そう言うと千尋は肩をすくめ悪戯っ子のように笑った。
その仕草がどこか沙織と重なった。
「……どうして僕なんですか?」
「運命なんていう言葉、椎名さんはお嫌いかもしれませんけど。私は勝手に運命のようなものを感じました。
本当にわからないんです。あの日、銀行で椎名さんに声を掛けてもらった後ずっと椎名さんの事が頭から離れなくて。もうこうなったらダメ元でいいから告白でもしてみるか! って。私にしては珍しくノリと勢いで突っ走りました」
「ノリと勢いですか」
苦笑いすると千尋も目元を緩ませた。
「無理に沙織さんの事を忘れようなんてしないでください。だけど、止まっていた時間を少しずつ動かしていきませんか?」
両手で和樹の手を握った千尋はにっこりと笑みを浮かべた。
その優しげな表情がまるで氷のように冷え切っていた胸のわだかまりをゆっくりと溶かし始めた。
和樹はまつ毛を伏せ唇を結んだまま僅かに口元を綻ばせ、そして「はい」と静かに頷いた。
「シロ、クロちゃん、沙織さーん! 私が椎名さんを絶対に幸せにしますから!」
天井を見上げながら千尋が声をあげた。
「―――それは僕の仕事ですから」