恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「わ、私が奥さんの立場だったら、自分の知らない女性とご飯て…、何度もしなきゃいけないの?お礼なら一度でいいでしょって思うし。何度も会うなんて可笑しいって思って当然でしょ?
だから、連絡先も消すから、消してください、さようならって言って…走った。…逃げるみたいに…」
「で、終わった訳だ。それで連絡はもう来ないと思ってる」
「…うん。来ないでしょ」
「その人に何か感じたの?」
「え?何かって、何…」
「そんな風に思わせる感じの人?」
「…そうは思ってなかった。だから意外だった」
「愛人になって欲しいとか、言われた訳じゃないんですよ。…ただの思い込みだと思いませんか?」
愛人って…。また周りを少し見た。
「…じゃあ、また会いたいって、どう取れば…」
「だから、そこに好意はあるんじゃないですか。誘ってるんだから、それは間違いないでしょ」
「…」
だから…それは困る。好意は持っては駄目でしょ?
「口に出さない好意でも許せないんだ」
「あ。…でも…」
心の中だけでも、奥さんに対しては裏切りじゃない?駄目よ。そう…絶対駄目、それは裏切りよ。ご飯だけでも、気持ちがあるって事なら駄目よ。そうよ、心に思いがあるのは駄目。
「誘われたっていいんじゃないですか?自分できっちり決めて、例え向こうから連絡が来ても出ないって決めておけば。その内、諦めるでしょ?実際、連絡が来るかどうかも、もう解らない事だし。振り切って来たんでしょ?」
「まあ、帰って来た…」
「で、自分の方の履歴とかはもう消したんですか?登録してた?」
「さっき消した。だから貴方にぶつかったのよね」
「それで…ですか」
「…うん」
「もう、この程度の話で大丈夫ですか?苛々する必要はないと思いますよ。だって、拒否するって決めてるんだから。終わりですよ終わり。自分次第。終わってる話です」
「でも…はぁ、そうか…そうね。あるかどうか解らない事だし。私さえちゃんとしてれば」
「そうですよ。んー、では、そろそろ解散しましょうか」
「え?あ、うん、そうね」
「真っ直ぐ帰るんですか?」
「え?うん、帰る」
帰るわよ?真っ直ぐ。
「…では、気をつけて。ここで俺が、夕飯でも一緒にどうですか、なんて言ってしまったら、は?って思うでしょうから」
「は?…あ…何これ。言っちゃった。フフ。そうね」
「フ。そういう事です。よく知らない人間と、理由も無いのに何で食事?って事ですよ。じゃあ、お先に」
「あ、はい。有り難う。誘ってくれて」
「どういたしまして。こっちも聞いてもらったし、有り難うございました」
コップとトレイを片付け、店を出た男性は、携帯で何かを話すと、来た道を戻るように横断歩道を渡って行った。
…そっちこそ、今から誰かとご飯の予定だったんじゃないの?だから、初めから私とは行くつもりの無い、上手い誘い言葉で済ませたんじゃないの?何か、誘わないのも悪いかなって…。
行かないって解ってるからこその社交辞令よ。