【BL】お前を抱きたい
車内は通学・通勤の人々で混雑していた。
隣の人の肩が押してくる。
―と、
「…あっ!」
その弾みによろけてしまった。
「…っ!佐々木っ」
――その瞬間、俺は彼の力強い手によって、彼の腕の中に助けられる。
「………あ」
顔が熱い。
「…怪我、無いか?」
「…は、はい……」
心配してくれるのは有難い。
…だが、公共の場でこんな体勢…
「…あ、すまない」
彼もその事に気付いたのだろう。
俺の腕を放してくれた。
「…すまない」
もう一度謝る高宮さん。
「……いえ、有り難うございます」
端から見れば、只の上司と部下だ。
だが俺たちは違う、違うんだ…
もう俺は、高宮さんの恋人なんだ。
胸を張って恋人なんだって言える立場になったんだ。